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ニュースリリース

観光とCOVID-19に関する政策概要

2020年08月26日
観光業は、世界で最も重要な経済部門の一つです。地球上の10人に1人を雇用し、さらに何億もの人々に生計手段を提供しています。観光は、経済を活性化し、国の繁栄を可能にします。観光は、人々が世界の文化と自然の豊かさを体験することを可能にし、人々を互いに近づけ、私たちが共有する人間性に光をあててくれます。

まさに、観光は、それ自体が世界の不思議の一つであると言えるかもしれません。そうした意味で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)によって、観光業が打撃を受けているのをみると、とても心が痛みます。

今年の1月から5月までの間に、国際観光客数は半数以上減り、観光による輸出額の減少はおよそ3,200億ドルにのぼりました。観光業では、全体として約1億2,000万人の直接雇用がリスクにさらされています。こうした人々の多くはインフォーマル経済や零細・中小企業で働いていますが、女性や若者が大きな割合を占めています。

この危機は、先進国にとって大きな打撃を与えていますが、開発途上国、特に多くの小島嶼開発途上国やアフリカ諸国では、緊急事態に発展しています。女性や農村コミュニティー、先住民など、歴史的に社会から隔絶されてきた多くの人々にとって、観光は統合、エンパワーメント、そして所得創出の手段となっています。

観光業はまた、自然・文化遺産保全の重要な柱でもあります。観光収入の減少で、保護区とその周辺では密漁や生息地の破壊が増えているほか、多くの世界遺産登録地が閉鎖されたことで、地域に欠かせない生計手段が失われています。観光業の再建は、私たちの責務です。

しかし、その再建は安全で公平、そして気候変動に配慮した形でなければなりません。復興を気候目標と整合させなければ、輸送関連の温室効果ガス排出量が再び急増しかねません。観光業に頼る何百万人もの生計を支援するためには、受入コミュニティーや労働者、旅行者にとって安全な、持続可能で責任ある旅行体験をつくることが必要となります。

私は復興を支援するため、5つの優先分野を明らかにしています。

第1に、この危機の社会経済的影響を緩和すること。
第2に、観光業のバリューチェーン全体のレジリエンスを構築すること。
第3に、観光業における技術の活用を最大限に進めること。
第4に、サステナビリティーとグリーン成長を推進すること。
そして第5に、観光で「持続可能な開発目標」をさらに支援できるよう、パートナーシップを育成することです。

観光が働きがいのある人間らしい仕事と安定した収入を提供し、私たちの文化・自然遺産を保護するという役割を取り戻せるようにしようではありませんか。


(アントニオ・グテーレス 国連事務総長メッセージより)